Apr.22.2005  4月21〜22日ポールリカール合同テストレポート 3(林みのるレポート)

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No.3(林みのるレポート) 悲惨な結果
急遽、ポールリカールのテストに飛んだ私の見た現実はダサかった。
コツコツと積み上げる地道な努力が好結果を呼ぶでしょう。 
                                   林 みのる


スパ1000kmレースの結果を聞いた時、私は自分の耳を疑った。予選7位、本戦4位なんてあり得ない結果であり、それこそ「想定外」の出来事だ。
さっそく色々事情を聞いてみても、もう一つ原因がはっきりしないので、とりあえず私は、責任者を半殺しにする為に、スパに続いてポールリカールで行われるタイヤテストに飛んだ。マシンはそのうち改善されていくだろう。しかし、私が最も心配したのはその戦略性の欠如である。出来立てのマシンが期待通りの性能を発揮出来ない事はままある話だが、もし、技術者がその能力の実体を把握していたら、ペスカカロロやザイテックにも負けるような状態でレースに参加させる事はしないだろう 世界中に「童夢S101-Hb」の完成度の低さをPRするだけのようなもので、戦略的におかしい。ルマンに向けてのテストと割り切るなら、誰にもそう判るような走り方をすべきで、一応、まともに勝つつもりの参戦の結果、絶対に負けてはならない相手の後塵を浴びまくった訳だから、私の頭に血が上るのも無理はないだろう。
F3の田中監督ほどではないが、腰痛をおしてポールリカールで見た現状はまだまだ悲惨で、ペスカロロが午前に出した1分39秒を、1分41秒台で追いかけるという信じられない光景が展開していた。その時、1分38秒台でも出したら、ピットから歓声でも湧き上がりかねない雰囲気にかなりの違和感を感じながらも、1日目の様子を観察した。
まだ、開発途上の悲惨な内容をここで事細かに書いてもしようがないので割愛するが、要するに、スタッフ一同がこのプロジェクトの本来の目的というか目標を理解していないのである。
童夢のワークス体制でのルマンの参戦の目的は、前を行く何台ものマシンが脱落してタナボタで優勝することでもないし、まして、何もペスカロロやザイテックと張り合う為ではない。ルマンで圧倒的な勝利を飾り、その技術力を世界に向けてアピールすることなのだが、童夢のスタッフ達は、思いがけず立ち上がりの悪いマシンにうろたえて、とりあえず、まともに走るようにと、あくせくドタバタするうちに、根性がすっかり打倒ペスカロロになってしまっている。ブレーキ、タイヤ、パドルシフト等、基本的な問題がまだまだ解決していないのに、ルマンに向けた低ダウンフォースのテストを繰り返し、スパのようなダウンフォースが必要なサーキットに向けての充分なセッティングも不充分なまま、スケジュールに押されて出場してしまい、結果、大金を投じて世界に恥をさらしてしまったという訳だ。ポールリカールの1日のテストでかなり状況は好転しつつあり、夕方、やっと宿敵ペスカロロ??のタイムに並んだが、私には、そんな細かな調整の積み重ねより、自分達がなにを目指しているのか、なにをしようとしているのか、その目的意識をしっかり自覚することが、まず先決だろうと考える。
マルセイユのポールリカールに、ゆうに20名を超えるスタッフがこのプロジェクトのために集結している。これからもヨーロッパでのテストは続く。それだけの大金を投じていれば、いずれマシンは速くなるだろう。
そこに達するまでのプロセスが重要であり、コンマ何秒かの積み重ねで、やっと目標とする性能に達しましたでは、その成り立ちからしてダサイ。
つまり、もう既にダサイ。「これをかっこよく終わらされるにはルマンでの圧倒的な勝利しか道はない」と言い残して、私は2日目のテストを早々に切り上げパリにお買い物に行く。
まあ、「ルマン24時間レース」という大勝負に挑むわりには、勝負師というよりは研究者集団みたいなチームだから、最後には何とかカッコつける算段はあるのだろうが、勝ち方の美学にまでこだわる気持ちの余裕が持てないとうところだろうか。こうなったら、ピンフやタンヤオ勝負は止めて、国士無双で決着を付けよう。