フリー走行が行われる朝8時20分頃から、天気予報通り雨が降り始めました。それでもフリー走行はドライコンディションのまま終了しましたが、昼頃になると、雨足が強くなってきました。 当初午後2時から、52周で決勝レースは行われる予定でした。しかし、もし、これが高速道路であれば、制限速度が50km/h以下に抑えられるくらいの激しい雨であるため、大会審査委員会は、当初のレース距離の75%に相当する39周で決勝レースを行うことを決定しました。この75%という距離は、ポイントが100%与えられる最小距離であることから決定されたものです。しかも、セイフティカー先導によって、最低3周のセイフティカーランの後、決勝レースをスタートすることとなりました。 また、1人のドライバーはレース距離の2/3までしか運転することが禁止されています。今回のレースの場合35周に相当しますが、レース距離が39周に減らされても、当初の規定通り、1人のドライバーの最大運転時間は35周のままで行われました。 ところが、レース距離が39周となったことで、ほとんど給油無しでもレースを走りきることが可能となりました。しかも、1人のドライバーの最大運転時間は35周のままですから、もし、2人のドライバーに能力差があるチームであれば、1人が35周、もう1人は4周だけの、博打のような作戦も選択可能となりました。 予定から遅れて、午後2時53分セイフティカーランが始まりました。前を走るクルマが巻き上げる水煙によって、2番手以下のクルマは、ほとんど前が見えないくらいの状況だったことから、3周終了してもセイフティカーはピットに入らず、結局4周のセイフティカーランの後、決勝レースはスタートしました。 ところが、スタートと同時、と言うより、スタート直前、こともあろうに、水たまりに足を取られた#18 TAKATA童夢NSXは、最終コーナーでスピンしてしまいました。そのため、GT500クラスの最後尾から追い上げることとなりました。 #8 ARTA NSXは慎重に4位でコントロールラインに戻ってきました。 セイフティカーランが4周行われたことで、予想通り、ギャンブルに出るチームが出てきました。何台かのクルマは、セイフティカーランが終了すると同時にピットロードに入ってきました。 しかし、ピット作業に要する時間は、何時ピットに入っても変わることはありません。もし、イレギュラーな要因があるとすれば、セイフティカーが導入された時ですが、鈴鹿サーキットは、ランオフエリアが広いサーキットであるため、セイフティカーが導入される可能性は非常に少ないと考えられています。 ポイントリーダーであることも考慮すると、通常通りの戦略でレースを闘うことがベストと判断しました。 #8 ARTA NSXは、とても90kgのウエイトハンデを積まされているとは考えられないくらいのハイペースで走行しました。次の周には2位までジャンプアップして、トップを走るスープラGTとの差をみるみる詰め、8周目に1秒差まで接近しました。 #8 ARTA NSXは5位以上の順位でフィニッシュすれば、例えライバルが優勝してもタイトルが確定します。そのため、間違っても、不注意な争いによって、クラッシュすることがないよう、ラルフ・ファーマンには2位キープの指示が出されました。充分に抜くことが可能であっても、ラルフ・ファーマンは、1秒から2秒の間隔で2位を走行しました。 スタートを失敗した#18 TAKATA童夢NSXも、素晴らしいペースで15周目には5位までポジションアップしましたから、速さによって、タイトルを勝ち取れると思われました。 ところが、17周終了後、クラッシュしたクルマが出たことから、セイフティカーが導入されました。セイフティカーランが始まった時、#8 ARTA NSXは、タイトル争いを行っているライバルに対して、50秒以上の差をつけていました。 圧倒的なマージンであることが判ると思います。 しかし、セイフティカーランによって、その差はほとんど無くなってしまいました。 ラルフ・ファーマンは圧倒的なマージンを築き上げましたが、90kgのウエイトハンデは確実に効いていたようで、無線でタイヤが辛いことを報告してきました。 そこで、4周続いたセイフティカーランが終了すると、#8 ARTA NSXはピットに入ってきました。 ほとんど雨が止んでいたため、これからコースコンディションが良くなることが予想されたため、溝の深いヘビーレインから、溝の浅いインターミディエイトにタイヤを交換することとなりました。もちろん、違うタイヤですから、4本総てを交換しました。4本総てを交換するため、多少多めの時間を要しますが、それを充分に補えるメリットを発揮するものと考えられました。もちろん、ドライバーもラルフ・ファーマンから伊藤大輔に交代しました。 浅溝タイヤは、変化する路面コンディションに対して最適のパフォーマンスを#8 ARTA NSXに与えました。ピット作業のロスを挽回するため、伊藤大輔は素晴らしい速さで追い上げました。 #18 TAKATA童夢NSXは、#8 ARTA NSXの3周後にピットに入りました。 #18 TAKATA童夢NSXは、タイヤを交換せず、ピット作業によるロスタイムを減らす作戦を目論んでいました。そのため、給油とドライバー交代の間、慎重に目視で4輪のタイヤを点検したところ、充分に走行可能であると判断されたため、予定通り、タイヤ無交換で走りきることとなりました。 ところが、コース上では、タイヤを交換したばかりのクルマや、そうでないクルマ等によって、非常に混雑していました。伊藤大輔は、S時コーナーで、GT300クラスのクルマを抜く際、接触してしまい、相手のクルマをコースアウトさせてしまいました。 そのため、#8 ARTA NSXは、ピットスルーのペナルティを与えられ、28周目伊藤大輔はピットスルーを行って、ポジションを12位に落としてしまいました。 タイヤ無交換によって、14秒程度タイムを節約出来ると予想されましたが、この作戦によって#18 TAKATA童夢 NSXは、7位でレースに復帰することが出来ました。 しかし、それが精一杯でした。 #18 TAKATA童夢NSXは6位、#8 ARTA NSXは12位でフィニッシュしました。 GT300クラスでは、#11 JIM GAINER FERRARI DUNLOPが素晴らしいパフォーマンスを発揮しました。ダンロップのヘビーレインタイヤが素晴らしい性能だったため、レース序盤雨が強い時、大きな差をつけられると考えていました。そのため、スタートドライバーを務めた田中哲也は、2位に圧倒的な差をつけてトップを独走しました。 第7戦オートポリスでも、#11 JIM GAINER FERRARI DUNLOPは充分に優勝を狙えるパフォーマンスを発揮しました。それをGT500クラスのクルマにクラッシュされたことで失っていました。そのため、慎重にレース戦略を進め、セイフティカーランのタイミングを巧妙に利用して、ピット作業を最小限のロスで終了しました。その結果、1位のままレースに復帰して、そのまま今季初優勝を成し遂げました。 2位には、100kgのウエイトハンデを積んだ#0 EBBRO M-TEC NSXが入りました。 1年間ご声援ありがとうございました。
決勝レース結果 ※コンディション:ウェット GT500 6 #18 TAKATA童夢 NSX39周1時間42分10秒611 10 #32 EPSON NSX39周1時間42分37秒428 12 #8 ARTA NSX39周1時間42分46秒798 R #100 RAYBRIG NSX5周
GT300 1 #11 JIM GAINER FERRARI DUNLOP38周1時間43分03秒058 2 #0 EBBRO M-TEC NSX37周1時間42分28秒397 5 #10 MACH-GO FERRARI DUNLOP37周1時間42分57秒862
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