Mar.27.2006  ポールリカールテストレポート1
2006年のS101-Hbiの正体は、2005年のS101-Hbとはまったく別物だった







 


●タイトコーナーでも速いルマンカーの誕生
 いよいよポールリカールの合同テストが始まりました。
 元々このテストは、LMES参加チームに対するテストとして設けられました。しかし、ルマン参加チームにとって、またとない、ルマンを想定したテストが行えることから、最近では、LMES参戦チームだけでなく、ルマンだけをターゲットとするチームも参加するようになりました。
 昨年S101-Hbは、ポールリカールでのスポーツカーの非公式のコースレコードである1分38秒52を記録しています。しかし、その後1コーナー先の緩やかなコーナーが、回り込んだコーナーに改修されてため、昨年のラップタイムは参考にはなりません。
 今週初め、スパ-フランコルシャンのテストが、雪によって中止となったRacing for Hollandの童夢S101-Hbiにとって、初めての本格的なテストとなりました。元々先週行われたザンドフールトテストや、中止となったスパのテストは、新しいEFIユーロ製のマネージメントシステムとイクイップメイク製パドルシフトシステムが、正常に作動することを、大きな目的としていました。パドルシフト、つまりシフトスケジュールのテストですから、最大のターゲットであるルマン用のギアレシオを組み込んで行う予定でした。もちろん、超高速コースであるルマン用のギアレシオで、テクニカルコースのザンドフールトやスパを走っても、見応えのあるラップタイムを記録することは不可能です。このこともあって、ポールリカールテストまで、S101-Hbiをあまり公表したくない、と言う事情もありました。
 スパのテストが中止となったことから、ポールリカールテストにおいても、最初ルマンと同じギアレシオを組み込んで走行することとなりました。と言っても、パドルシフトのシフトスケジュールのシュミレーションを行いながら、新しい空力セッティングの確認とセットアップが行われました。
 「それでも童夢はルマンを目指す」を読んで頂ければ、S101-Hbiの内容がご理解いただけると思いますが、新しいS101-Hbiは、昨年のS101-Hbと比べると、大幅にリアのダウンフォースが強化されています。リアのダウンフォースを増やす方法の1つとして、フロントノーズに大きなカナードウイングが取り付けられました。
 どうして、リアのダウンフォースを増やすのに、フロンノーズにカナードを取り付けるのか? 不思議に思う方々も多いと思います。その理由は、フロントノーズ両サイドにカナードを取り付けることによって、サイドボディの空気の流れを整流することが可能となります。2年前からS101のノーズには、サイドボディを流れる空気を整流して、ドラッグを削減する目的で、小さなカナードウイングが取り付けられていました。この経験から、より積極的にカナードウイングによる整流効果を活用するため、より大きなカナードウイングを取り付けることとなりました。
 サイドボディを流れる空気を整流させると、リアウイングの効果が高まることから、リアのダウンフォースが増えることとなります。
 もちろん、フロントのダウンフォースを増やすことも可能ですから、一石二鳥の効果を得ることが可能です。
 このリアのダウンフォースを増やすカナードウイングは、通常のカナードウイングと違って、ノーズのアンダーカバー上に取り付けられます。
注1:写真3をご覧になると、良く判ると思います。
 大きなダウンフォースを、前後バランス良く獲得したことによって、S101-Hbiは、タイトコーナーが連続するセクター1、回り込んだ中高速コーナーが連続するセクター3で素晴らしい速さを発揮しました。正直なところ、昨年のS101-Hbは、セクター1を苦手としていました。特にセクター1の先端にあるヘアピンカーブが苦手でした。ところが、S101-Hbiは、このヘアピンを実にクイックに素早く向きを変えてクリアしてしまいます。
 ミストラルストレートの終点の高速コーナーでは、ヤン・ラマースは「頑張れば、6速のままクリアすることも出来る。素晴らしい空力バランス」と絶賛しています。
 ルマン用のギアレシオを組み込んでいましたから、ラップタイムは意識してなかったのですが、午前中の最初のセッションを4位で終了しました。

●まるで別のクルマに変身
 午前中のセッションの結果、パドルシフトが正常に作動していることが確認出来たことから、午後のセッションまでの短い時間を使って、2速から6速のギアレシオを、ルマン用からポールリカール用に組み替えることとなりました。
 と言っても、パドルシフトの開発が終了した訳ではなく、正常に作動することが確認出来ただけですから、今後、より最適なシフトスケジュールとするよう、セットアップが続けられるとこととなります。
 午後になって、大切なテストメニューであるタイヤテストが本格的に開始されました。
 ダンロップは、構造とコンパウンドの双方共、新しく開発したタイヤを大量に持ち込んできました。それらの中で、現在のコンディションに相応しいタイヤを選んでテストする訳ですが、種類が多いため、テストをこなすことだけでも大変です。
 主にヤン・ラマースがタイヤテストを行っているため、アレックス・ユーンは、あまりニュータイヤで走行していないのですが、タイヤ性能の差が出難いセクター1で、アレックス・ユーンは、ヤン・ラマースと遜色ないタイムを記録しています。チームの評価も上々ですから、慣れるに従って、良い仕事をしてくれそうです。
 気温が低い午前中に、ルマン用にハイギアードのギアレシオでパドルシフトや空力のセットアップを行ったことから、気温の高い午後、やっとラップタイムを意識した走行を開始しました。
 最も気温の高い午後3時過ぎ、ヤン・ラマースは1分46秒台を記録するようになりました。ミストラルストレートで6速を有効に活用出来るようになったことから、最高速度も一等賞である311km/hを記録しました。そして、最終的に3番手のラップタイムで、セッションを終了しました。トップのクリエイションのタイムは予選タイヤによるもの、2番手のペスカロロのタイムは、気温の低い午前中に予選タイヤで記録したものであることを考えると、昨年のS101-Hbとは別物の、素晴らしいポテンシャルを持つことが判ると思います。
Racing for Hollandは、午後5時で1日目のテストを終了しました。明日も9時から5時までテストは行われます。

ポールリカールテスト26日午前9時から午後5時まで
1#9クリエイションハイブリッド/ジャド5リットルLMP11分45秒869
2#17ペスカロロC60ハイブリッド/ジャド5リットルLMP11分46秒129
3#14RfH童夢S101-Hbiハイブリッド/無限4リットルLMP11分46秒738
注:出走32台、上位3位まで