Apr.18.2008 S102 Project 2008 Fuji Test Report














 10日前鈴鹿で行われたシェイクダウンテストは、取り敢えず動かして、各システムの作動を確認しただけでした。シェイクダウンらしい不具合も幾つか発生したため、本当の意味で、初めてのテストは、今回の富士スピードウェイから始まることとなります。

 この時期、各サーキットは非常にスケジュールが混み合っていて、童夢は2日間のテストを望んでのですが、どうしても1日分しかコースを借りることが出来ません。しかし、富士スピードウェイの好意によって、もう1日夕方の時間帯に走行させて頂くことが可能となりました。もちろん、暗くなる可能性もありますが、ヘッドライトの調整を行う良い機会ともなりますから、喜んで走らせて頂くこととなりました。

 鈴鹿テストの際、最も大きな課題はザイテック製のパドルシフトシステムでした。しかし、ザイテックとジャドのエンジニアが努力をした結果、2日目になると、一応不満のない作動状況を実現しました。
 米原に戻って、ギアボックスを分解して、総てをチェックしたところ、新品らしい固さがあることも判明したため、富士スピードウェイでは、素晴らしい作動が期待されました。

 1日目午後4時片岡龍也が乗り組んだS102は、ピットを後にしました。1周してピットに入ってチェックを行って、そして、本格的なテストが始まりました。最も心配されたパドルシフトは、非常に良い状態で作動しているようです。シフトチェンジが不可能となることは皆無で、これまで作動の遅れが指摘されていたシフトダウンは、最適なタイミングでシフトチェンジされているようです。片岡龍也によると「シフトダウンが良くなったため、むしろ、シフトアップを速くしたい」と報告していますから、一応問題無しと判断すべきでしょう。

 また、キャビンの上に設けられるエアインテークは、エンジンの作動状況と密接に関係するため、慎重に風洞実験を繰り返しても、実際に高速で走行してみなければ、本当の効果は判りません。そこで、童夢は最適と思われる2つのインテークを作りました。発表会や鈴鹿のシェイクダウンで使用されたものと、より前方まで延ばしたものです。
 この2つを比較した結果、より前方まで延ばしたインテークの方が、より大きなエンジン性能を発揮出来ることが判明しました。

 ルマンでは、時として非常に高温の中レースは行われます。童夢では、そのような状況に備えて、たくさんのスリットを設けたリアカウルを用意しています。つまり、ラジエター、そして空気の入り口の大きさは変えないで、空気の出口だけを大きくするためのアイテムです。
 このリアカウルと交換するだけで、クーリング能力が向上するのであれば、即採用となるのですが、空気の入り口は同じですから、その効果が心配されていました。まだ空力セッティングを行う段階ではありませんから、取り付けていても、何もデメリットとはならないため、取り敢えず、たくさんのスリットを設けたリアカウルに交換して、クーリング能力の差を見ながらテストを続けることとなりました。

 まるでアルマジロのようなリアカウルですが、結果から言いますと、このリアカウルに交換しても、水温はほとんど下がりませんでした。やはり、空気の入り口を拡大しない限り、クーリング性能を向上するのが難しいかもしれません。しかし、今日の気温はサーモスタットが作動するような低温だったため、本当のテストは行なえませんでした。現在のところ、クーリング能力に何も問題はありません。インテークを変更するのは容易でなく、しかも、大きく空力性能にも影響を与えます。クーリング性能に不満が出るような状況とならないのであれば、このままルマンを走ることとなるでしょう。

長いストレートを持つ富士スピードウェイを走ることによって、スポーツカーレースファンの方々は、S102がどれくらいの最高速度を記録したのか? 興味を持たれると思います。富士スピードウェイで325km/hを記録すれば、ユノディエールの第1シケイン手前で340km/hに達します。
 走り始めると、S102は直ぐに310km/hを超える最高速度を記録しました。しかし、なかなか315km/hを超えません。変だと思っていたら、富士スピードウェイの最高速度計測ポイントが、既にブレーキングに入っている地点にあることが判明しました。データロガーによると余裕で320km/hを超える最高速度を記録していました。

 何もセッティングを行わないで走行している段階です。セッティングを行って、最終コーナーの脱出速度を速くすれば、容易に2〜3km/hは向上しますから、325km/hを超える最高速度を記録するでしょう。
 S102が素晴らしい空力性能を持っていることは間違いないようです。

 富士スピードウェイの好意によって、走行時間を延長して頂いて、午後7時まで走行を続けることが可能となりました。しかし、富士スピードウェイには夜間走行用の照明設備はありませんから、片岡龍也は慎重に走行を続けました。最後の30分間は、ヘッドライトの光軸を調整することを目的として、走って1日目のテストを終了しました。

 2日目になって伊藤大輔が加わりました。
 昼頃から激しい雨が降ることが予想されるため、ドライコンディションの間に、出来る限りメニューを消化することが求められました。
 走り出すと直ぐ、伊藤大輔も、パドルシフトが非常に良い状況で作動しているのを確認しました。シフトアップ時の要求も同じです。

 2回目のテストでシャシーや空力セッティングを行うことは難しいですから、まったくシャシーセッティングが行われてないだけでなく、富士スピードウェイを走ると言っても、組まれているギアレシオは、基本的にルマンと同じものです。ですから、どうしても2速、3速、4速はマッチしません。5速と6速も、少し高いかもしれません。そのため、1速で無理矢理引っ張ってシフトアップしたり、トルクバンドを外れることもあるため、到底ラップタイムを追求するのは不可能です。

 午前中の走行が終了するのと同時に雨が降り始めました。午後になると、雨脚は強まってきましたが、予定通りテストを行いました。
 今回のテストでは、童夢マジックが、カーボンファイバーコンポジットで作った反射鏡を持つヘッドライトが取り付けられています。しかし、写真でも判る通り、強い雨によって、ヘッドライトハウジングの裏側のタイヤハウスから水が進入するため、急遽対策が施されました。

 雨は降り続いていましたが、最後に片岡龍也に交代して、連続走行を行って、2回目のテストを終了しました。
 慎重に開発を行っているため、当然かもしれませんが、S102には、まったく深刻なトラブルは発生していません。
 今後、いよいよ速さを追求するためのテストが開始されます。