May.21.2008 S102 Project 2008 Spa-Francorchamps Test Report















鈴木英紀レポート

とりあえず、想定タイムはクリアしました。

昨年、童夢S101.5は、最後のテストをスパ-フランコルシャンで行って、ルマンへ乗り込みました。それまでの苦労が嘘のように、S101.5は素晴らしい速さで走り回って、童夢はルマンを迎えました。

今年、童夢は、ルマンのための前線基地をベルギーに設けました。ベルギーに拠点を設けた理由は、借用可能な立派な設備が整った工場を見つかったことと、あらゆるサーキットに対して立地条件が良かったからです。
ベルギーに拠点を置いたことも理由の1つのようですが、S102もルマン前の最後の開発テストは、昨年同様スパ-フランコルシャンの恒例のテストディを使って行うこととなりました。

今回のテストは、これまで童夢が、しばしばテストで走ってきたスパ-フランコルシャンで行われます。そのため、比較の意味も含めて、S101シリーズによって、スパ-フランコルシャンを何度も走った経験を持つヤン・ラマースを招いてテストは行われました。

昨年、改修されたと言っても、ルマンと同じように、スパ-フランコルシャンは非常に難しいコースであることから、名手ヤン・ラマースのパフォーマンスに期待がかかりました。日本から駆けつけた伊藤大輔と共に、S102の最後のテストに臨みました。

最初、伊藤大輔が乗り組んでテストを開始しましたが、直ぐにクラッチの調子が思わしくないことが判明しました。パドルシフトを常用するS102の場合、クラッチを使用するのはスタートの時だけですが、今回のテストは1日中続くため、走行を中断して、リアセクションを分割してクラッチをチェックすることとなりました。

スパ-フランコルシャンのテストディでは、フォーミュラとGTカーに分かれて様々なクルマが一緒にテストを行います。昨年もそうでしたが、プロトタイプスポーツカーは童夢だけだったため、今年もフォーミュラとGTのどちらの時間帯でも、走行を許されました。

クラッチを点検して走行を開始すると、直ぐに伊藤大輔は2分7秒台のラップタイムを記録しました。オールージュで車体が路面に接触するため、ほんの少しロードクリアランスを上げて走行を再開しようとすると、一緒に走っていたGTカーが11コーナー付近にオイルを撒いたため、赤旗が提示され走行が中断されてしまいました。

オイルの処理が行われて走行が再開されると、直ぐに伊藤大輔は2分4秒台までラップタイムをアップさせました。たくさんの遅いクルマが一緒に走ってクリアラップが取れないだけでなく、下りの11コーナー付近にオイルが撒かれていることを考慮すると、誰だって、これくらいが現実的なラップタイムと思ったかもしれません。

続いてヤン・ラマースが乗り組みました。ヤンはS102初体験ですが、これまで、伊藤大輔や立川祐路が開発してきたS102は、ヤンの好むセッティングとは違うようで少々乗り難いようです。しかし、童夢のエンジニアも、今回だけのテストドライバーであるヤンの好みに合わせてセットアップしている時間がないため、従来の方向のまま開発は進められました。

さすがに天才ヤン・ラマースだけあって、自分の好みのセッティングでなくても、走り慣れたスパ-フランコルシャンだけあって、「ステアリングはOKだが、サスペンションが動きすぎる。もっとダイレクトな操縦性が好ましい」等々、次々と有益なコメントを提供しました。

午後4時少し前から再び伊藤大輔が乗り組み、ミディアムコンパウンドのレースタイヤのまま2分2秒台までタイムを上げました。
先週スパ-フランコルシャンではLMSが行われています。ガソリンエンジンカーのトップタイムは、ローラ/アストンマーティンが記録した2分2秒台でした。S102は、そのタイムを容易に破ってしまいました。

こうなると、例えセッティングが不充分でも、プジョーが記録した1分58秒台へ挑戦したくなるのは、当然かもしれません。
一緒に走っているGTカーの中には、S102よりラップタイムが90秒以上遅い3分30秒程度で走る遅いクルマも居ます。しかし、セッション終盤、童夢はタイムアタックを試みるため予選タイヤの用意をミシュランに要求しました。タイヤのグリップが向上するのに併せて、ストレートスピードを稼ぐためリアウイングが寝かされました。

たった2回のタイムアタックでしたが、伊藤大輔の操るS102は、308km/hの最高速度と2分0秒89のラップタイムを記録しました。
先週行われたLMSで、プジョーの最高速度は309km/hでした。ちなみにガソリンエンジンカーの最高速度は、ローラ/アストンマーティンの298km/hです。

しかし、伊藤大輔は、難コースのスパ-フランコルシャンを走るのは初めてです。本番の予選と違って、遅いクルマがたくさん走っているコンディションにも関わらず、プジョーの1km/h差の308km/hの最高速度2分0秒89のラップタイムを記録しました。2台目のアウディの予選タイムより、伊藤大輔の操る童夢S102は速いラップタイムを記録しています。本番の予選であれば、充分に2分を切ることが可能でしょう。

ルマンが楽しみな状況となってきました。