Jun.14.2006  2006 LeMans24h RACE Report 3
童夢S101-Hbi/Judd登場







 


●秘密兵器を取り付けた童夢S101-Hbi/Judd
 6月12日いよいよジャコバン広場で公式車検が開始されました。12日は午後だけがスケジュールに組まれて、パリダカでお馴染みのルック・アルファンのコルベットC5Rを先頭に、GMワークスのコルベットレーシング、寺田陽次郎氏が乗り組むビニーモータースポーツ等が次々と登場しました。最後に現れたのは強豪ペスカロロスポーツでした。
 寺田陽次郎氏は、1回のDNQを含めると、何と28回目のルマンだそうです。もはや、6月のルマンに無くてはならないタレントです。昨年までWRとジョイントして、自身のオートエクゼによるエントリーでしたが、今年はWRで一緒に乗り組んだことのあるビル・ビニー率いるビニーモータースポーツから参戦しています。
 残るほとんどのトップチームは、今日6月13日に車検を割り当てられました。クリエイション、ザイテック、クラージュ、リスター、そしてアウディが次々と登場しました。午前11時からのアウディに続いて、Racing for Hollandの童夢S101-Hbi/Juddが登場しました。
 車検の際、決勝レースだけでなく、予選だけでも、使う可能性のあるパーツの検査を受けなければならないことから、もしかしたら、二度と公表されないかもしれない姿で童夢S101-Hbi/Juddは現れました。
 今日の時点で詳しくお話することは出来ませんが、写真をご覧になって、どこが違うか? 違いを発見することが出来る方は、筋金入りの童夢ファンと認定されることでしょう。

●ペスカロロNo.17の謎
 テストディでトップタイムを記録したペスカロロチームのNo.17について、様々な噂が飛び交っています。
 2006年のレギュレーションにおいて、ドライバーの周囲の気温を30℃以下に保つことが要求されています。もちろん、炎天下にこの条件をクリアするにはエアコンの装着がマストとなります。そのため、イコールコンディションを目論んで、エアコンの重量分として、エアコンを必要としないクルマであっても、総てのカテゴリーのクルマは、最低車重を25kg引き上げられています。さらに、エアコンを装着した際、エアコンを駆動させる動力分として、リストリクター径を0.5mm大きくすることが許されています。
 しかし、このエアコンのレギュレーションが適応されるのは、GTカーと屋根付きのLMPカーに限られています。つまり、現在のトップカテゴリーの主流である屋根無しのLMPカーは該当しません。
 ところが、アンリ・ペスカロロは、屋根無しであっても、ドライバーの足下の温度は非常に高温となることから、エアコンのレギュレーションの導入を強く要求していました。
 どのカテゴリーであっても、エアコンを装着した際、常にエアコンを作動させているわけではありません。ドライバーの周囲が30℃以下の状況であれば、エアコンを作動させる理由はありません。
 しかし、エアコンを作動させてなくても、0.5mm大きなリストリクター径はそのままですから、大きなパワーを得ることが可能です。
 ペスカロロの主張の行方を全チームが見守っていますが、5月のLMSスパの車検では、ACOのテクニカル・ダイレクターのダニエル・フェルドリックスとペスカロロチームの間で、この件について話し合いが行われましたが、スパでは曖昧なままレースは行われました。
 しかし、ペスカロロチームは、既に既成事実として、このレギュレーションを取り扱っているようで、No.17に疑惑の目が向けられています。
 No.17が平凡な速さであれば、大きな話題とはならなかったでしょうが、先週行われた公式テスト、No.17が他のライバル達を2秒引き離してトップタイムを記録したため、注目を集めることとなりました。
 昨日の夕方に行われたペスカロロチームの車検の際、スムーズに検査をパスしたNo.16に対して、No.17は大きく遅れました。
 特に助手席に置かれたハコが、疑惑の対象となりました。
 もし、このハコがエアコンであれば、ストーリーは完成するのですが、ACOは、No.17の車検内容について公表していません。
 明日午後7時、最初の予選がスタートする前までに、内容が公表されることとなるでしょう?

●GT1はプライベートチームが勝つ?
 GT1クラスは、プロドライブが開発したアストンマーティンDBR9とコルベットC6Rの闘いと思われています。アストンマーティンはNo.007とNo.009を付けたワークスチームだけでなく、FIAGTにおける事実上のファクトリーチームであるBMSスクーデリアイタリアや、ドバイGTチームの支援を受けるシルテックやロシアンエイジも走らせます。しかし、たくさんの最新型のコルベットとアストンマーティンが登場する一方で、幾つかの強豪チームは旧型を選択しました。
 リック・アルファンがコルベットC5Rを走らせ、強豪ラルブルコンペティションに至っては、同じプロドライブが作った最新型のアストンマーティンDBR9を持つにも関わらず、DBR9の前にプロドライブが開発したフェラーリ550マラネロでルマンに挑戦します。
 その理由は、昨年プロドライブとコルベットレーシングが走らせたアストンマーティンDBR9とコルベットC6Rが、他の(プライベートチームが走らせる)GT1カーを圧倒してしまったことから、ACOが、この2台に対して最低車重を25kg引き上げることを決定したためです。
 そのため、完全に姿を消すと思われたフェラーリ550マラネロやコルベットC5Rが復活することとなりました。元々フェラーリ550マラネロは、前面投影面積が小さいことから、ルマンに向いたクルマと考えられていますが、公式テストディで、プロドライブのアストンマーティンDBR9やコルベットレーシングのC6Rを抑えて、GT1クラスの最高速度1等賞となる301km/hを記録しました。
 コーナーリングスピードを引き上げるには、高度な開発やセッティングが要求されることから、プライベートチームにとって容易ではありません。しかし、元々速い最高速度を持つのであれば、困難な開発に苦労されることなく、有利にレースを進めることが可能です。
 もしかしたら、旧型のフェラーリやコルベットC5Rが、最新型のアストンマーティンや、バリバリのGMワークスの走らせるコルベットC6Rを破って、ルマンに君臨することとなるかもしれません。