第8戦オートポリスの結果、NSX-GT勢は大きなウエイトハンデを科せられることとなってしまいました。特にブリヂストンタイヤを履くNSX-GTは、(第7戦もてぎの結果によって科せられた)特別性能調整の25kgのハンデも継続されることとなったため、2位でフィニッシュしたNo.18 TAKATA童夢NSXは105kg(通常のハンデ80kg+特別性能調整25kg)、3位のNo.100 RAYBRIG NSXは125kg(100kg+25kg)と、通常の感覚では絶望的な極端に重いウエイトハンデを積むこととなりました。オートポリスで追突されたNo.8 ARTA NSXは、多少可能性のある65kg(40kg+25kg)です。しかし、闘いの場が富士スピードウェイであることを考えると、辛い闘いを覚悟しなければなりません。 NSX-GT勢にとって、大きな可能性は、No.32 EPSON NSXが、2段階の性能向上処置を与えられ、他の3台のNSX-GTとは逆に、特別性能調整によって25kgの減量が許されることでしょう。 Team Honda Racingの2台のNSX-GTの場合、困ったことに、上位を狙える、65kgのウエイトハンデのNo.8 ARTA NSXは、シリーズポイントランキングがトップと11ポイント差の7位で、ほんの少ししかシリーズチャンピオンの可能性が残っていませんが、絶望的な105kgのウエイトハンデを積むNo.18 TAKATA童夢NSXは、7ポイント差でシリーズポイントランキングの2位につけています。 と言っても、マシンを入れ替えることが出来る訳ではありませんから、それぞれ、最良のセッティングを求めてテストが行われました。 ウエイトハンデが65kgのNo.8 ARTA NSXは、通常のセッティングで速さを追求することが出来ますが、105kgのNo.18 TAKATA童夢NSXの場合、何らかの工夫無しで成功することは不可能です。 SUPER GTでは、ウエイトハンデが100kg以上となった場合、1段階小さなリストリクターを装着することと引き替えに、50kgの減量が認められています。今回と同じように、第3戦富士スピードウェイの際、ウエイトハンデが100kgを超えたNo.18 TAKATA童夢NSXは、1段階小さなリストリクターを装着するのと引き替えに、50kg減量して走りました。純粋にラップタイムだけを比較するのであれば、1段階小さなリストリクターによってパワーが失われたとしても、50kg軽い車重とした方が、速いラップタイムで走ることが可能と考えられます。 ところが、通常の状態であっても、NSX-GTはライバルと比べてストレートスピードが速くはありません。今年の幾つかのレースで明らかなように、どんなにNSX-GTが速いラップタイムで走ることが出来ても、決勝レースでライバル達に前に出られてしまったら、抜き返すことは非常に難しくなってしまいます。ですから、速いラップタイムで走ることだけでなく、ストレートスピードの速さを維持することが、決勝レースで成功するには大切なポイントとなります。 そのため、リストリクターは通常通り30.0mm×2のままとして、フルに105kgのウエイトハンデを積んだ状態と、1段階小さな29.4mm×2のリストリクターを装着する代わり、50kg軽い65kgのウエイトハンデとした2つの状態でシュミレーションが行われました。 重い車重のデメリットは、速さだけでなくタイヤの負担が大きいことが上げられます。しかし、5月と違って、タイヤについては少々有利な状況となっています。既にシーズン当初から、FRのライバル達は使っていましたが、夏以降NSX-GTに対してもブリヂストンは17インチの小径ホイールのリアタイヤの供給を開始しています。 17インチホイールを使っても、全体の直径が小さくなる訳ではありませんから、通常の18インチホイールを使うタイプと比べると、タイヤ内の空気量が大きくなるため、トラクションが有利となります。そのため、トラクションがウイークポイントのFR用が先に開発されることとなったのでしょう。しかし、ホイール径が小さくなることで、タイヤの変形量が増えますから、理論上、横方向の剛性が失われることとなります。このような課題もあることから、17インチと18インチの両方のタイヤが使われる状況となっています。 No.8 ARTA NSXも、17インチと18インチの両方のタイヤをテストしましたが、最終的に18インチでセッティングすることとなりました。No.8 ARTA NSXも65kgのウエイトハンデを科せられていますから、決して軽い状態ではありません。しかし、17インチのメリットはあったとしても、18インチタイヤの方が有利と判断しました。 65kgのウエイトハンデを積みながら、富士スピードウェイを好む伊藤大輔は2位のタイムを記録しました。このことからも、No.8 ARTA NSXの場合18インチの選択が、正しいと言えるでしょう。 空気量が大きくなることから、トラクションだけでなく、理論上、タイヤの耐久性も大きくなります。つまり、タイヤに辛い重い車重のクルマでも、タイヤの耐久性を維持出来る可能性が出てきます。 105kgのウエイトハンデを科せられたNo.18 TAKATA童夢NSXにとって、大きな味方となるのが理解出来ると思います。 1段階小さなリストリクターと引き替えに50kg減量するのか? それとも、決勝レースを考慮して重い車重のまま、通常のリストリクターを維持するのか? 現在慎重にミーティングが行われています。 タイムは大体ウエイトハンデの大きさから予想出来るものとなりました。2段階の性能向上処置を与えられたNo.32 EPSON NSXがトップタイムを記録する一方、65kgの重りを積むNo.8 ARTA NSXが2位と健闘しています。105kgのNo.18 TAKATA童夢は、なんとか7位のタイムまでセットをまとめました。125kgのNo.100 RAYBRIG NSXも、No.18 TAKATA童夢NSX同様、フルに重りを積んだ状態と、1段階小さなリストリクターと引き替えに50kg減量して、75kgのウエイトハンデとした状態の2つパターンでのテストを繰り返しました。最大のウエイトハンデは120kgと決められていますから、ウエイトハンデが120kg以上になった場合、120kgを超えるウエイトハンデは、数字上の累積となって、実際に積む必要はありません。しかし、1段階小さなリストリクターと引き替えに50kg減量する場合、本当のウエイトハンデから50kgを減量することとなります。ですから、125kgのNo.100 RAYBRIG NSXは、1段階小さなリストリクターを取り付けても、125kg−50kg=75kgですから、45kgしか軽量化することは出来ません。そのため、慎重にシュミレーションが行われていたのでしょう。
フリープラクティス(総合) 1 No.32 EPSON NSX 1分33秒036 2 No.8 ARTA NSX 1分34秒392 7 No.18 TAKATA童夢 NSX 1分34秒963 14 No.100 RAYBRIG NSX 1分35秒770
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